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ドイツの歴史学会における

中世のワインに関する研究状況について

要旨:

 

ワインの歴史に関してドイツでは19世紀以来数多くの研究がなされてきたが、その多くは産地の郷土史家や愛好家によるものだった。1950年代からアルザスやケルン、リューベックにおける主要産物・商品の一つとして、ワインは経済史の視点から中世史研究の対象となってきた。やがて1970年代後半のモーゼル川沿岸におけるローマ時代の葡萄栽培を裏付ける考古学的発見を端緒として、1980年代後半から2000年代にかけて中世におけるワインの生産・取引・消費をテーマとする数々のシンポジウムと研究プロジェクトが取り行われ、その成果をまとめた論文集が刊行されている。本稿ではこうした状況をふまえ、1.まず本題に関する主要な研究を挙げ、2.ローマ時代から中世にかけての葡萄栽培の連続性、3.初期中世から15世紀にかけての葡萄栽培の拡大とその担い手について取り上げるとともに、4.アルザスにおける主要な輸出商品としてのワインと15世紀におけるシュトラースブルクからリューベックまでのライン川を経由した輸送の実際、5.トリーア、ケルン、フランクフルト、リューベックを例に、都市のニーズによって異なるワイン商業の仕組みを紹介し、6.中世に流通していたワインの種類と偽造についてと、7.都市におけるワインの消費に関連して、ワインが日常的な飲料であった南ドイツの生産地帯に対し、北ドイツのハンザ都市では、富裕層と富裕層が集う社会集団のステータスシンボルであったことを示唆し、研究状況を総括する。関連する文献も注の中でなるべく網羅したつもりである。甚だ拙い叙述ではあるけれど、ワインの歴史に関心を持つ人の参考になれば幸いです。

『ドイツの歴史学会における中世のワインに関する研究状況について』

本文

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