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ブラウネベルガー・ユッファーの日時計。

ゾンネンウーア

Sonnenuhr

モーゼルではおなじみの畑名で、日時計を意味するゾンネンウアーは、ノイマーゲン、マーリング、ヴェーレン、ツェルティンゲン、ユルツィヒ、ポンメルンそれとブラウネベルクにある。

時間を計ろうとする人類最古の試みである日時計はオリエントで発明され、ヘロドトスによればカルデア人により紀元前575年頃にギリシアへもたらされたという。もっとも、晴れている時だけ時を示すそれは、すでに百年以上前から実用的な意味を失っており、ワイン村のあちこちの家の南向きの壁に、太陽の恵みをシンボル化した飾りとして見られる程度になっている。それら日時計にはしばしば古くから伝わる格言がラテン語で刻まれており、太陽が太古に神として崇められたこととの類似性を伺わせる。曰く『太陽なくして何も無し Sine sole nichil』『太陽は全てを照らす Sol lucet omnibus』。

日時計は豊富に陽光を必要とする葡萄畑に、太陽の恵みをもたらす一種の聖像として、目立つ場所に設置されている。葡萄畑の栄えある一角に位置を占めると、その周囲の畑は大抵日時計と呼ばれるようになった。中部モーゼルの名所のような案配のヴェーレン、ツェルティンゲン、ユルツィヒの日時計を目にした時、昂揚しつつもなぜか時の流れとともに朽ちていく現世のむなしさが、荒れ果てた古城に立つ時のように脳裏をよぎった。夏の象徴である葡萄畑の中の日時計が、太陽の恩寵で満ちた秋の夕暮れ、ゆっくりと沈みゆく陽光の最後の閃きとともに別れを告げる光景を思い出したからだろうか。

 



参考文献:Karl Christoffel, Die Weinlagen der Mosel und ihre Namensherkunft, Trier 1979

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